マットペイントという言葉の誤用

マットペントという言葉の説明や認識として、

・写真を使った壮大な風景画
・リアルで壮大な風景画
・写真を下地に絵を描くこと

などが見受けられますが、これらはいずれも間違いです。映画関係者が聞いたら眩暈を起こして倒れるレベルです。

 

そもそもマットペイントとは映画におけるSFX(特殊撮影技術,特撮)の一つです。カメラによる撮影が困難なシーンにおいて、実写映像を絵で補完する技術、あるいはそのための絵を指す言葉がマットペイントです。

具体的に例を出すと(古い映画ばかりで申し訳ない)、以下のようなものをマットペイントと呼ぶのが正解です。

※映画スピードにてバスが高速道路の切れ目をジャンプするシーン。この切れ目は、実際にはつながっている高速道路の映像に切れ目をマット画合成したもの。マットペイントは実際にはそこにないものを描き替えたり補完したりする。

※映画ダイハード2のラストシーンは本物の映像ではなく絵でした。


※映画インディ・ジョーンズ~魔宮の伝説~のクライマックスの断崖。
これは実写にリアルな崖の絵を合成して撮影されたものでした。マットペイントは現実にはない景色をでっちあげることができる。

 

しつこいようですが…

写真を使った絵=マットペイント

ではない
もっとも勘違いの多い誤用です。マットペイントの合成先は主に実写映像です。ですから写真並みにリアルに見せるように描く必要があります。
特にデジタルマットペイントにおいて写真を使うことが多いのは、合成先が実写であり手っ取り早くリアルに描くうえで、それが最適だったという結果でしかないわけです…。なお写真を下地に絵を描く技法のみを指すのならフォトバッシュという専用の言葉があります。

 

このマットペイントという用語の誤用。写実系絵描きがマットペイント風に描いた絵を見る側が取り違えたのか、はたまた、技術部分だけ独り歩きして広がってしまった結果なのか、イラスト業界に根強く蔓延するほど広まってしまいました。いまやイラスト技法の解説サイトまで誤った解説をする有様です。

 


マンサード屋根・ギャンブレル屋根・半切妻屋根…

不意にこの建築はマンサード屋根ではなくギャンブレル屋根ですね…と近代建築を巡りながら写真を載せている方を見かけて、そういえば、マンサードギャンブレルは良く混同されると思い、これまたよく混同される半切妻屋根と一緒にまとめてみました。

とにかく良く混同されるというこの3種類(試しにググって見りゃわかります)。この記事を書いた時点で日本語版wikipediaのマンサードの項目にある写真すら間違えている(マンサード屋根でない写真を載せている)という恐ろしさ。書籍や建築趣味系のブログですら怪しい解説が多い。また欧州(フランス・ドイツ辺り)ではギャンブレルとマンサードを区別しないことになっているらしい(?)ので、更にややこしいことになっています。あえて識別するなら米英由来で比較的新しいギャンブレルとブルボン朝時代のフランス由来のマンサードは発祥地も歴史的な経緯も違うので、どちらを継承したかという点が重要なのかもと。

近代建築畑でこの3種の混同は散見されますね…(これは主観になりますが)
例えば、稀にマンサード屋根と紹介されている、宮城県知事公館はマンサード屋根ではなく実際は半切妻屋根であったり、マンサード屋根の駅舎と紹介されている西桐生駅は、厳密にはギャンブレル屋根と称するのが適切であったりするわけですが…一度定着するとなかなか直らない。本場フランスでは区別してない(らしい)からマンサードでいいだろ!と言われればそれまでなのですが…。

で、典型的なマンサードってどういうの?

↓こういうのです。

パリはとにかくマンサード屋根で構成された建築物が多い。



ヴェルサイユ宮殿も大部分がマンサード屋根。


ウィーン歴史地区

日本の例としては小樽の日本郵船ビルなどが厳密な意味でのマンサード屋根となります。

◆追記

やはり、フランスなどでは特に区別していないということが調べているうちにわかって来たので図解です。

検証が甘いので間違てるかもですが、混同の最大の要因として、地域よって定義がバラバラだったというオチでした。

では妻面が切り落とされているマンサードと、ギャンブレルはどう区別をつけるのか?…通常マンサードは軒が飛び出たりしないそうだ。ただ軒が飛び出ていないギャンブレル屋根も北米には点在するため、結局は根っこの部分から区別していくしかないというお話でした。

※以前は妻面を正面とする傾向がギャンブレルの特徴では?と考えていましたが、初期の北米のギャンブレル屋根の建築の例を見るに、その法則は全く当てはまりませんでした。